birdiswitch’s diary

読んだ本を個人的に記録するためのもの

センスメイキングできるようになりたい

今回の本 『SENSEMAKING 本当に重要なものを見極める力』

 著者のクリスチャン・マスビアウは人工知能機械学習偏重の現在の風潮をこう評しています。

 

最近は、アマゾンやグーグルをはじめ、数え切れないほどのアプリやベンチャー企業がビックデータを活用している話題で持ちきりだ。 

マーク・ザッカーバーグが、人々のビックデータ中毒を見逃すはずもなく、先ごろ投資家向けに、フェイスブック機械学習を活用し、「世界のありとあらゆる事象を網羅する決定的なモデル」を構築すると語っている 。

彼らに言わせれば、文学や歴史、哲学、芸術、心理学、人類学といった文化を探求する人文科学は、もはや「社会的要請」に応えられないというわけだ。様々な国民性やそれぞれの世界を自分科学的見地から理解する行為に対して、役立たずの烙印が公式に押されたのだ。 

こうした風潮の中で、筆者は読者にどうしても届けたいメッセージがあり、いてもたってもいられない思いでペンをとった。それは、文化的知識の価値は間違いなくあるということだ。 

 

丸善でこのフレーズを目にして、それはあるかも、と思いました。

 

私は普段デジタルマーケティングの仕事にも携わります。ヒトの感情変化をデータからとらえるんだ!とか統計モデルも扱ったりします。

 

でも、人の感情変化を"ログ"だけで捉えるのって、どうしても不完全です。データの背景をどう読み解いてどう意味づけするか、使い手の意識こそすごく重要なんじゃないか!?、という疑問にこのフレーズがすごくぴったりきたんですよね。

 

自然科学 x 人文科学で、世の中の新しい見方が見つかったらすごく素敵です。そのヒントになりそうだなと思った箇所を幾つか紹介していきたいと思います。

 

シリコンバレー的であること

この本の第二章はシリコンバレーという心理状態というタイトルです。シリコンバレーから発せられるものを批判的に捉えること自体、なんか新鮮に感じます。

 

が、「自然科学」vs「人文科学」の視点で見たときに、シリコンバレー的な考え方(著者はシリコンバレーで重宝される特有の発想法をこう呼んでいます)にも、おかしなというか、ある意味滑稽さにも通じる要素を感じました。

 

 

言葉こそ違うが、根底にある考え方は同じだ。「何ごとも」技術が解決してくれるということである。そして、その解決策は必ずや革命的なものになるという。

「・・・コツコツと積み重ねられてきた小さな改良を足がかりに、・・・少しずつコツコツと改良を重ねていく」などと宣言してベンチャー企業を起業する者はシリコンバレーでは皆無である。過去とはきれいさっぱり縁を切り、未来へと一気にジャンプしようとする破壊的な創造を掲げているのだ。 

シリコンバレーのテクノロジーが、世界にイノベーションを引き起こしたのは周知の事実です。私たちは世の中が一変していくのを目の当たりにしました。

 

だから、シリコンバレーの彼らが語るこれからのテクノロジー、データとAIで次々と世界が劇的に変わっていく、そんな予言もそうに違いない、とすんなり受け止めてしまってた気がします。

 

勝手な憶測ですが、著者は彼らシリコンバレーのリーダー達と実際に会って感じた違和感が半端なかった、のかなと感じました。本当にテクノロジーだけに優れていて、教養が全く感じられないリーダーたち。そういう人がもてはやされて資金と権力が集中してしまう米国の現実に警鐘を鳴らしたい。そんな思いを感じます。

 

他にも、"ビックデータ教"と揶揄した風潮も評されています。

 

ビックデータは人間の偏見を取り除き、その数自体が何よりの証拠になり、理論など不要というわけだ。

同記事によれば「真実を見極めるうえで、モデルや仮説を元に体系を説明する過去のやり方は、的外れで荒削りの推量になりつつある。」

こうしたビックデータ信奉を掲げたコサンルタント達も随分大勢米国内に出回っているようです。

 

 ビックデータがあれば、国民全体に関して何かわかることがあっても、人間一人ひとりに関することは少しも見えてこない。

白鳥といえども、赤い光を浴びれば赤く見える。この白鳥の本当の色を理解するには、光の特性を理解している必要がある。言い換えれば、事実は常に文脈の中に存在するのであって、そうした事実を個別のデータポイントに切り刻んでしまっては、無意味で不完全なものになるだけだ。

そこまで端的にデータ変重に偏ったコンサルタントが持てはやされるという事自体、日本の商習慣では想定しづらいかな、、と思いつつ、実際、モデル構築の案件をしてたりすると、データで全て解決できるようになると本気で期待しているような人もいたりします。

 

ま、それ自体はどっちでも良い話です。

 

こうしたシリコンバレー流の誤った想定に対して、筆者が提示する是正策がセンスメイキングである。途方もないくらいのコンピュータ処理能力を自在に使える時代になったとはいえ、腰を据えて問題に向き合い、苦悩し、先人らがコツコツと丹念に取り組んできた観察の成果に助けを借りながら、答えを見つけ出そうと努力する事を我々人間は避けて通れない。

本書では、そのためのロードマップを披露していきたい。

 

ぜひ、お伺いしたいです!という第二章でした。

 

 

 フォード高級車リンカーンでのセンスメイキング

後日更新。